相反する要件の克服 – 熱と圧力のコントロール
合わせガラスは、ガラス2枚の間に中間膜を挟んで、高い熱や圧力をかけて作られます。
しかしながら、NCAPフィルムは液晶を使用しているために熱や圧力に敏感という特性があります。
NCAPフィルムを中間に挟んだ合わせガラスを作るためには、この相反する条件を調和させる技術が必要でした。
熱や圧力を極限まで低くしNCAPフィルムへの影響をミニマムに抑えながら、ガラス製品として均一な見た目と「透明/不透明」の切り替え動作を実現することは、当時としては至難のことでした。
合わせガラスとして実用性をもたせるためには、さらに大面積(約1m x 2.5m)で均一な仕上がりにする必要がありました。
この当時、液晶ディスプレイを使ったテレビのサイズがたったの数インチという時代でした。また、最終製品に電気を使用することから、専用電源や施工法の開発も行う必要があり、電気製品としての観点の開発要素も多岐にわたったのです。
ウムの歴史-3に続く
兵庫県の高級住宅街「芦屋」に位置するレストランカフェ「C3」。
このお店では、ガラスをふんだんに使用しハイセンスな空間を形作っています。
ガラス主体の設計コンセプトを十分に生かしつつ、同時にトイレ使用者のプライバシーを保護する必要性から、ウムの「瞬間調光性」に白羽の矢が立てられました。
トイレのドアにUMUを使用し、トイレの鍵がUMUのON/OFFスイッチになっており、「トイレ使用中」はドアが不透明になります。
トイレ使用者にとって、プライバシー保護は最優先事項です。そこで、ブロンズのガラスを採用し、さらにトイレ使用中はトイレ内部の照明を自動的に暗くすることで、トイレ使用者のプライバシー保護に万全に期しています。
NCAP技術との出会いと「ウム」の開発
1980年代後半に、日本板硝子中央研究所(現:技術研究所)・研究開発部グループでは調光ガラスの開発を行っていました。
薄膜分野の責任者であった河原秀夫主席(以下:河原主席)(当時)は、ある専門誌でNCAP技術について知り、調光ガラスへの応用を確信しました。
この、Dr. Fergasonの発明した特許の専用実施権は、米国Raychem社が有していたため、河原主席はさっそく訪米し同社を訪問しました。
Raychem社を訪問してみると、同社の子会社のTaliq社ですでにNCAPフィルム(現:UMUフィルム)を開発・製造していることを知ったのです。
河原主席は、さっそくNCAPフィルムの販売権の取得交渉を開始し、1986年にRaychem社から日本及びアジアでの独占的製造・販売権を取得することに成功しました。
日本板硝子は、その後Taliq社の協力を得ながら、NCAPフィルムを2枚のガラスと中間膜で挟んだ合わせガラスとしての製品化に取り組んだのでした。
UMUの基本技術は、「液晶の父」と呼ばれた米国のDr. James Fergasonが1981年に、高分子分散型液晶素子NCAP(Nematic Curvilinear Aligned Phase)を発見したことによる。液晶分子は湾局面に配列すると光の散乱が増加することから、液晶を球状のカプセルに閉じ込めるとカプセルを通る光は散乱し乳白色になる。しかし、液晶分子は電圧がかかると整列する特性があり、液晶カプセルに電圧がかかると平行に光を通すようになる。
透視・不透視のしくみ
Off 不透視 Opaque
On 透視 See-through
電圧がかかるとカプセル内の液晶が整列し光を通す
「ウム」は、この特性を活かし、シート状にした液晶カプセルを2枚のフロートガラスで挟んだ合わせガラスで、シートの両端に電極を配置し電圧をON、OFFすることで、ガラスの透明、不透明を実現している。
オフィスのレイアウトの中で、会議室・応接室は意外と大きなスペースを占めているものです。
その間仕切りにウムを使用することで開放的な空間演出を可能にします。
部屋を使用していない時に透明にすることで、オフィス空間が奥行きのある広々としたものとなります。
■限られたスペースを有効に使いこなす間仕切りシステム
一般的に、会議室での打ち合わせは、当事者以外に見られないようなシチュエーション作りが必要です。しかし、間仕切りで区切ってしまう方法は、閉鎖的な空間となり、息苦しく辛い場所になってしまうことにもなりかねません。
ウムを使用すれば、外光が会議室だけでなく通路までさしこむような開放的な状況が創り出せます。
■他の間仕切り素材と一線を画した商品へ
プライバシーを確保するために、カーテンやブラインドといった「後付け」の素材はいりません。従って、レールスペースなども存在せず、すっきりとしたデザインになります。
また表面はガラスなので、汚れてもクリーニングし易く、ブラインドのように埃がたまることもなく衛生的です。
瞬間調光ガラス「ウム」と液晶調光シート「ウムフィルム」のサンプル購入をご希望の方は「お問い合わせ」よりご購入いただけます。